特に高校時代の部活引退後、学校内で最も帰宅するのが速いほど歩くのの得意なボクだったが、いまでは見る影もない。
歩くのが遅くなったのは、いまはいている靴が悪いという問題だけではないだろう。明らかにスタミナが衰えている。このままでは下手したら、鎌倉~江の島エリアの精神療養散歩すら、いずれ出来なくなってしまう恐れがある。
それに、スピードだけでなく、歩く距離も短くなったように感じる。
かつては、膝なのか足の裏なのか忘れたがものすごい痛くなり、それでも歩き続け、最終的には足を引きずりながらコンセプトカフェに来店するというワーク氏の奥義、九十九(つくも)の手の一手である、「ムリシテ・クンナーヨ」を発揮するガッツに溢れていた。
ワーク氏の九十九の手には他にも、そのたぐいまれな話しかけ辛い邪悪なオーラによってメイドカフェで干されているとき、壁とスマートフォンとメニュー表を、まるで給食のじかん先生に教わった三角食べの如く、順番にながめていく「トライアングル・ホサレイヤー」や、メイドカフェにでんぐり返しをして入店する「ローリング・エントリー」などもある。
最近は疲れたらサウナにいってリラックスルームでお昼寝するので、ムリシテ・クンナーヨが発動することもないし、メイドカフェで干されそうになる予感がしたらそもそも行かないので、トライアングル・ホサレイヤーも中々繰り出されない。「メイドカフェで干されているので壁をみています」とつぶやくことも滅多になくなったのである。
そして、ローリング・エントリーは恐らく、今後、死ぬまでの間で二度と披露されることは無いだろう。あれは、伝説のビルの伝説のお店という環境の中、ボクと、某有名常連と、某有名芸人が3人セットでいなければならないし、でんぐり返しを命令する姫もいなければ発動しない。
……いや、九十九の手は、はっきりいって、悪手(あくしゅ)しかないだろう。体力が衰えて余計なことをしなくなったので良くなったんじゃあないか。。