正確には折伏(しゃくぶく)というのだろうか。折伏というのはいわゆる宗教の勧誘のことをいうようで、対人関係が少ないボクでも何度か折伏されたことがある。
1番はじめは大学1年生の、入学したての頃だった。某個別指導塾でバイトをしてたときのことだ。
「◯◯先生、今から、ラーメン食べにいきませんか?!」
そう丁寧に声をかけてくれたのは、1教室に1人、配属されている正社員の塾長だった。
塾長は、身長が高く、人間的に魅力があり、ユーモアセンスもある方だった。こんなボクにも、アルバイトとはいえ先生として敬意を持って接してくれた。
大人の会社員からラーメンに誘われたものだから、社会経験の少ないボクは喜んでついていった。
そうして、目的の、塾長おすすめのラーメン屋に車を運転して向かっていったのだが、お店は閉店していた。
「あれ、閉まってましたね。それでは別のお店にいきましょう」
といって、連れていってくれたのは、どうみても飲食店ではなくて、何やら怪しい会館だった。
中に入ると、衝撃受けたのだが、テーブルに浮浪者みたいな雰囲気のおじさんたちが5〜6人座って談笑していた。
彼らの風貌というのがこう、目が黄色かったり、歯が無かったりして、人生ではじめて出会う世界の住人という雰囲気だった。彼らはシャイなようで、知らない人間のボクが来ると、隅っこの方に退避してしまった。
「◯◯先生、ここにお弁当がありますから、好きなの選んで食べてください!」
ボクは好きな弁当を選び、塾長にお金を払って頂き、すぐに食べはじめた。どんなお弁当だったかや、味は全く覚えていない。
すると、次は、何やら、社会的にも立場が上にありそうな、今まで数々のビジネスを乗り越えて来たような、人間としての迫力に溢れる40〜50台と見える男性2人が塾長と2人で座っているテーブルに腰掛け、そのうちの1人が、その宗教にどうして入らなければならないのか、どんないいことがあるのかを1〜2時間熱弁しはじめた。彼は大企業の部長クラスらしかった。たしかにそれだけのオーラはあった。
そして、畳部屋に通され(こっちが先だったかも)、その場の全員が、御本尊様と呼ばれる、仏壇にかけられた巻物に向かい、謎の呪文を唱えていた(いや実際は、実家もルーツが同じ宗教なので、なんていってるかは良く分かっていたのだが、一応伏せておく)ので、なすすべもなく、ボクも皆んなに合わせて呪文を唱えた(幼少期から何度も総本山に行ったことはありいきなりみなさんについて行けたので塾長は驚いていた)。
そうして塾長の車に載せて頂き解散したのだが、初めて御本尊様に対峙した者には、「初心の功徳(しょしんのくどく)」なるものが訪れ、要するに、近日中にとんでもない良い事が訪れるらしかった。。
それは翌日のことだった。
また個別指導塾で生徒を教えていると、自分の受け持ちでは無いが、しきりにボクの顔をみてくるJC3年生が現れた。
彼女は今日がはじめての受講とのことだったが、なんと、当時はまだ痩せていたボクに一目惚れしたようなのである。
すぐにメアド交換を要求され、それに応じ、彼女から、付き合っている人はいるのかとか、中学3年は恋愛対象に入るのかといった質問責めを受け、人生でこれまでに無いモテ期が突如として訪れる大事件が発生した。
果たしてあれが、「初心の功徳」だったのか、偶然だったのかは、今となっては知る由もない。