大学を卒業する直前だったか、もう卒業してしまい、無職と化してしまった時期だったか、2010年の春頃に、とある女子大生Nとデートをした。
元はと言えば、某匿名巨大掲示板内で名前を付けていたボクがNに絡み始め(大体、名無しさんからハンドルネームを付けた理由自体が、ナオンに認知されるためだったのである)、スカイプ通話からはじめ、エロイプにまで発展し、とうとう、吉祥寺の映画館で、アリスインワンダーランドを観る約束をこぎつけることができた。
駅前で合流したNは、小柄で細く、全般的に紺色の服装をしており、下は、ミニスカートを履いていた。
スカイプでは自分を豚のようだと卑下していたにも関わらず、こんなに可愛い子とおデートができるとは、思っても見なかったというのが正直なところだ。
一緒にラーメンを食べてから、目的の映画館へ向かった。
途中の横断歩道は赤信号だったので2人で停止していると、ホットパンツ姿の、若々しいナオンが、綺麗な脚を見せびらかしながら自転車を漕いでボクらの目の前を通り過ぎた。
彼女が遠くへいってしまうと、Nは羨ましそうにこう発言した。
「あの子、脚綺麗だったね」
ボクはどう反応したか記憶が無いけれども、きっと、小説にできるような、気の利いたセリフは、出てこなかったのだろう。
・・・アリスインワンダーランドを見終わり、吉祥寺の街を散策していると、何故か分からないけれども、ここで一か八かの大勝負に出るしか無いと当時のボクは考えたらしい。
伊丹十三監督作品「スーパーの女」のシーンを真似し、まだ昼間だったというのに、こう言ってしまった。
「ホテルいかない?」
一瞬、その場が凍りつき、次にNは、グーパンチのポーズをしながら、
「殴るよ!」
と、叱ってきた。つまるところ、この一世一代の大勝負は失敗に終わってしまったのである。
それからまた街を散策するなどして、コーヒーショップで一息つくと、Nは先輩と会う約束があるとかいう理由で、足早に去っていった。
ボクは仕方がないので、吉祥寺を出発したのち、近くの荻窪でまた下車し、春木屋というラーメン屋で中華そばを食べ、街を徘徊して帰路についた。
・・・・・・
・・・それから3年半後、また某所で奇跡的に1度会い、タピオカを一緒に飲んだ。
その時はホテルに誘わなかったが、気分で彼女の耳に息を吹きかけてみたら、嫌がられてしまった。気持ち悪いことをしたとおもう。
しばらくはフェイスブックで動向を確認することが出来たが、その更新も途絶えてしまい、もう、二度と会えない気がする。