なんとなく彼のことを思い出してしまったが、名前がどうしても思い出せない。出席番号順が自分より後ろだった気がするので、た行以降ではあろうが。
たしか、当時???さんは29歳だったと記憶している。29歳と言えば、あなたがインターネッツの住人を自負しているのであれば、「やるなら軍師」のあの男が思い浮かぶだろう。
彼は終始挙動不審で人と喋る時も目を合わさないしおそらく引きこもりに見えた。
ボクは大体、今でも関係の続いている職着訓練校おじさんや、おじさんの隣に座っていたSさん、ボクの隣の席の女性でソフトウェア開発の資格を持っていたGさんなどと交流出来ていたが、???さんとは殆ど話したことは無かった。
しかし、一度だけエレベーターで一緒になったので、話しかけてみたことがある。
「???さんは訓練が終了したら今後どのように過ごすおつもりですか?」
それに対し、???さんの回答はこうだった。
「う〜ん、そうですねぇ、、、まずは資格でも取って、、それから就活ですかねぇ、、、」
なんだかボクは変な質問をしてしまい、23歳の若造の分際で、29歳の先輩に対し、まるで自民党の麻生太郎副総理のような口の聞き方をしてしまったことは今でも反省している。
それから特に会話した記憶が無いんだが、職業訓練校最終日の訓練終了後に、皆さんで談笑する機会があったときに、その談笑の中になんとなく彼も喋る訳でないが混じっていて、話しかけられたそうにしていた。
ボクだったか他のメンバーだったか忘れたが、何かを???さんに話しかけたら嬉しそうに答えてくれて、これはもしかしたらこの職業訓練校のおかげで???さんの人生が始まるんじゃないだろうかという希望が感じられたのを今でも覚えている。
そろそろ解散しそうになった間際、よく分からないが???さんがニヤニヤしながらボクの方を見つめてきて、なんだろうと思って目を合わしたら、こう言われた。
「◯◯さん、チャックが空いてますよ!w」
「あははw」
と苦笑いしたが、よかった。職業訓練校という空間は実に良い空間だというふうに感じた。おおよそ10年後の半年に一回お会いしている職業訓練校おじさんもできたし職業訓練校はまたいきたい。
結局???さんとは連絡先も交換していないし今どうしているか知る由もない。自分はもう32歳で、彼の当時の年齢を上回ってしまった。つまりは軍師の年齢を越えてしまった。
今こうやって労働に従事できているのは職業訓練校のおかげというのは言えると思う。名ばかりだが役職も与えられ名ばかり軍師となるがあまり気楽なものではない。
???さんもどこかで元気に暮らしているといいなとたまに彼のことを想い出す。
あの、大学生を超えた年齢の大人たちが集って講座を受講する、資格予備校とも違う謎の空間、職業訓練校、これは死ぬまでにまた通いたい。