JKだった私は小田急多摩線終着駅の唐木田へ毎朝向かっていた。下り列車なので座席に座れるから友人と着席していたところ、新百合ヶ丘で多摩線方面の大学に通うと思われる大学生が1人乗り込んできた。
身長は低く、顔立ちは悪くないが太っており、冴えない男だった。雰囲気は陰湿で、2ちゃんねるで人の悪口を言ってそうだったし、おそらく彼女はいないし、友人も少ないか、もしくはゼロ人だろう。
だが、そんなことはどうでもいいことだ。
どうでもよくないのは、その冴えない男は、明らかにわざと、私たちの目の前に、仁王立ちし、吊革につかまって、顔をじっと眺めてきたことなのだ。
友人と会話している最中、この邪悪な雰囲気を察した私たちは、寝るふりをして、男に顔を眺められないよう、うつむくよりなかった。痴漢をされていた訳ではなかったけれども、恐怖で身体が動かなかった。
はるひ野を過ぎたところで、我慢ももう少しだという希望が見えてきた。しかしそのときだった。
私の膝の内側あたりに、男の膝がジーパンを通しくっつくのが感じられた。これも、電車の揺れに乗じたように見せかけて、100パーセントわざとだろう。
恐怖は増々強まり、体は更に硬直してしまった。陰湿キャラクターの大学生に膝をくっつけられることは、おそらくヤンキー集団に囲まれたり、ヤリサー集団にレイプされるよりも、遥かに怖い経験だった。
この時のことは、15年が経過し今ではパート主婦をやっている現在でも鮮明に覚えており、一生消えないトラウマである。
私には小学校2年生になる息子がいるけれども、どうか、電車でJKの目の前に仁王立ちし膝をくっつけてくるような男にだけは育ってほしくない。